インフルエンザと新型コロナへの同時感染「フルロナ」とは
「フルロナ」とは、インフルエンザウイルスと新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)の2つのウイルスに同時感染することを指します。正式な病名ではない造語です。
英語圏では、インフルエンザのFlu、新型コロナウイルス感染症のCOVID-19(Corona virus infectious disease-19)から、「Flurona」もしくは「Flucovid」とも言われつつあります。
フルロナの症状・報告例……症状は同じだが、重症化リスクは高くなる
そもそもインフルエンザと新型コロナウイルス感染症の症状は、非常に似ています。そのためこの2つに同時感染しても、単独感染の症状と大きな違いはありません。
新型コロナウイルス感染症では、咳、発熱、頭痛、呼気時間が短くなる、全身倦怠感、味覚、嗅覚の障害がありますし、インフルエンザは、咳、発熱、頭痛、痛み、全身倦怠感があります。インフルエンザでも鼻詰まりがひどいと嗅覚障害もあるとされています。フルロナに特徴的な症状はないのです。
一方で、重症化リスクには違いがあります。これまでの報告をまとめて2021年に論文発表されたデータでは、新型コロナウイルス感染症の0.7%にインフルエンザの同時感染が見られました。
1万7011人の成人で18ヶ月間の調査では、1.3%がフルロナだったと報告されています。フルロナの割合は成人で0.3%ですが、子どもでは3.2%となっております。
また、新型コロナウイルス感染症の重症例では、新型コロナウイルス感染での重症度は0.6%でしたが、インフルエンザとの同時感染による重症例は2.2%で約4倍との報告があり、インフルエンザとの同時感染は新型コロナウイルス感染症を重症化する可能性があります。
動物実験でも、インフルエンザAとSARS-CoV-2の感染でより体重減少と肺への障害が強く、炎症を起こすサイトカインが高いと報告されています。
フルロナの治療法……重症化リスクが高い人は特に重要
フルロナは、それぞれの単独感染時よりも重症化するリスクがありますので、それぞれの感染症に対する治療が重要になってきます。それぞれのウイルスに対する抗ウイルス薬を適切な時期に使用することが大切です。
インフルエンザでは、オセルタミビルリン酸塩、バロキサビルマルボキシル、ファビピラビルの内服薬、ザナミビル水和物、ラニナミビルオクタン酸エステル水和物の吸入薬、ペラミビル水和物の点滴が使用されます。新型コロナウイルス感染症では、安定供給のために、国が管理している状況です。
特に、インフルエンザ、新型コロナウイルス感染症で重症化リスクの高い人、高齢者などは抗ウイルス薬でウイルス量を減らすことが重要になります。
予防に勝るものなし! フルロナ対策で重要な感染予防法
フルロナによる重症化を避けるためにも、まずは、フルロナにならないことです。もう既に繰り返し言われていることですが、適切な感染対策が大切です。
病院などの医療機関では常に感染症リスクがあることを考えて対策をしていますが、同様の対策を、できる範囲ですることが大切です。手には常に細菌やウイルスが付いていると考え、口や鼻、目を触る前には、しっかりと手を洗い、可能ならアルコール消毒をしましょう。
自分が体調が悪い時は、ウイルスを持っているかもしれませんので、マスクなどの飛沫感染予防です。空気が乾燥すると飛沫が飛びやすくなりますので、加湿をすることも効果的ですし、温度が下がるとインフルエンザウイルスの感染力が上がりますので、室温を保つこともポイントです。
何より自分の免疫を高めるためには、ワクチン接種。そして規則正しい生活、バランスの取れた食事、適切な睡眠で感染予防をしていきましょう。
清益 功浩プロフィール
小児科医・アレルギー専門医。京都大学医学部卒業後、日本赤十字社和歌山医療センター、京都医療センターなどを経て、大阪府済生会中津病院にて小児科診療に従事。論文発表・学会報告多数。診察室に留まらず多くの方に正確な医療情報を届けたいと、インターネットやテレビ、書籍などでも数多くの情報発信を行っている。
文:清益 功浩(医師)