上場企業の決算短信(金融機関除く)の記載に基づく、“日本一の金持ち企業”はいったいどこか?
法人会員向けに与信管理クラウドサービスを提供するリスクモンスターはこのほど、決算書の分析結果に基づく、第12回「金持ち企業ランキング」の調査結果を発表した。
本調査における対象決算期は、2023年7月1日時点で開示された2022年4月期決算以降の最新決算で、対象企業は金融機関(銀行、証券会社、保険会社等)を除く、決算短信提出企業3,192社となる。
上位20社のうち14社でNetCashが増加
上場企業の決算短信(金融機関除く)の記載に基づきNetCash(※)を算出した結果、「金持ち企業ランキング」の1位は「信越化学工業」(NetCash1兆4,198億円)だった。以下、「任天堂」が2位(同1兆2,637億円)、「ファーストリテイリング」が3位(同9,080億円)となり、以下「リクルートホールディングス」(同8,421億円)、「SUBARU」(同6,669億円)、「SMC」(同5,914億円)、「ファナック」(同5,125億円)と続いた。
「信越化学工業」は、2023年3月期決算における大幅増収増益によってNetCashが増加した結果、2018年実施の第6回調査以来の1位となった。上位20社にランクインした企業のうち14社において、前回調査よりもNetCashが増加しており、2社(信越化学工業、任天堂)が1兆円の大台を超えている。
前回順位との比較では、「東京エレクトロン」(前回20位→今回9位)や「日揮ホールディングス」(同33位→同19位)がランクアップしている。「日揮ホールディングス」は、前期の赤字から今期300億円の黒字に回復し、多額のCashを獲得したことで上位進出となった。(図表A)
※日本会計基準:
NetCash=現預金 - (短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + 一年以内返済の長期借入金 + 一年以内償還の社債 + 割引手形)
※国際財務報告基準:
NetCash=(1)現預金 - 有利子負債 または、(2)現預金 - (借入金 + 社債 + 割引手形)または、(3)現預金 - (短期借入金 + 長期借入金 + 社債 + 一年以内返済の長期借入金 + 一年以内償還の社債 + 割引手形)のいずれかで算出。
なお、トップ100については、図表Bにまとめた。(図表B)
20社のうち6社が無借金経営!
金持ち企業ランキング上位20社の「現預金」、「有利子負債」、「営業キャッシュフロー」について、それぞれ集計したところ、現預金では、「信越化学工業」、「任天堂」、「ファーストリテイリング」、「リクルートホールディングス」、「SUBARU」が上位となった。
有利子負債においては、「任天堂」、「ファナック」、「東京エレクトロン」、「キーエンス」、「ネクソン」、「塩野義製薬」の6社が0円であり、営業キャッシュフローでは、「信越化学工業」、「SUBARU」、「リクルートホールディングス」、「ファーストリテイリング」、「東京エレクトロン」の順に多い結果となっている。有利子負債1,000億円超の企業は4社のみとなっており、多額の現預金を有するだけでなく、有利子負債の少なさが金持ち企業ランキング上位の要因となっている。(図表C)
業績好調推移の影響か、有利子負債・株主還元実施企業が増加
NetCashの増減について集計を行ったところ、調査対象3,192社のうち、50.6%の企業においてNetCashが減少しており、前回調査(39.3%)から11.3ポイント増加する結果となっている。また、ランキング上位100社においても、NetCashが減少した企業は43.0%となっており、前回調査(21.0%)から22.0ポイント増加している。
現預金の増減について集計を行ったところ、3,192社のうち、1,722社(53.9%)において現預金が増加しており、現預金が減少した企業は半数以下に留まっている。2023年3月期決算における上場企業の純利益合計は、2期連続で最高益を更新しており、好調な業績推移に伴って現預金が積み上がったとみられる。他方、有利子負債の増減について集計を行ったところ、3,192社のうち、1,847社(57.8%)において有利子負債が増加していることが明らかとなった。(図表D)
また、前回ランキング上位100社に対し、現預金の増減と株主還元策の関係について調査したところ、自社株買いおよび増配などの株主還元策を実施している企業は、100社中89社(89%)となっている。2022年における上場企業の自社株買いは、過去最高の9兆3,900億円を計上していることから、利益の株主還元が進んだこともNetCashが減少した一因であると考えられる。(図表E)
<実施概要>
・調査名称 :第12回「金持ち企業ランキング」調査
・調査方法 :決算書の分析結果に基づく調査
・調査対象決算期:2023年7月1日時点で開示されていた
2022年4月期決算以降の最新決算
・調査対象企業 :金融機関(銀行、証券会社、保険会社等)を除く、決算短信提出企業
・調査対象企業数:3,192社
出典元:リスクモンスター株式会社
構成/こじへい