■大都市集中の訪日客分散へ
星野リゾート(北佐久郡軽井沢町)は22日、山岳観光に特化した新ホテルブランド「LUCY(ルーシー)」を立ち上げると発表した。国立公園などを活用した自然観光を強化することで、大都市に集中しているインバウンド(訪日客)の地方誘客を目指す。第1弾として、群馬や福島など4県にまたがる尾瀬国立公園の玄関口・鳩待峠(群馬県片品村)に「LUCY尾瀬鳩待」を9月1日に開業する。
同社によると、訪日客は東京や大阪、京都などに7割が集中。一部地域がごった返すオーバーツーリズム(観光公害)解消のため、自然観光の強化で地方への分散を狙う。
これまで山に親しんできた登山客だけでなく、潜在的な「エントリー層」にも興味を持ってもらう。星野佳路(よしはる)代表はオンラインプレス発表会で「山を観光拠点とし、現代の観光客に合うように(自然観光を)書き直していく」と説明した。
LUCY尾瀬鳩待は、温水洗浄トイレやシャワー、パウダールーム、Wi―Fiなどを完備。全25室の客室は、プライバシーを確保するドミトリータイプの1人部屋の他、2~4人用の客室を設定し、従来の山小屋のイメージを払拭する。24時間利用可能なコンビニエンスストアを設置し、登山での栄養補給に適した軽食などを扱う。
ホテルの横には、日帰り利用ができるカフェ「はとまちベースCafe&Shop」も開業する。尾瀬名物の花豆のソフトクリームや、登山グッズも扱う。
LUCYは温泉旅館「界」や都市型ホテル「OMO」などに次ぐ六つ目のブランド。今後、北アルプス・立山など複数の山岳観光地で展開を予定しているという。
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■「山小屋とは違ったタイプ必要」
星野佳路代表のオンラインプレス発表会での主なやりとりは次の通り。
―新ブランドの背景は。
「訪日客は一部地域に集中し、東京や京都ではオーバーコンセントレーション(過集中)が起きている。このままでは政府が掲げる『2030年に訪日客6千万人』実現は難しい。35カ所の国立公園が存在する国内に自然観光のコンテンツを作り、分散させれば快適に過ごしながら訪日客を伸ばすことが見えてくる」
―従来の山小屋は登山者の安全確保や登山道道整備などの役割も担ってきた。
「『LUCY尾瀬鳩待』はそれほど登山道の中には位置していないため、大きく重視する必要は今のところないと考えている。将来的に機能を担うことが重要な場所で運営していくことがあれば、対応する必要がある」
―LUCYの運営戦略は。
「マーケットを広げるためには、これまでの山小屋とは違ったタイプが必要。LUCYは客層を広げるだけではなく、働く人々の環境改善や後継者問題などを考える上でも変革を促すのではないか」
―今後の候補地は。
「日本にはさまざまな場所があり、ここだと決めているわけではない。LUCYが稼働し、新ブランドに興味がある方から声をかけてもらうことを期待している」
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