「あの人、自由にやってるよなぁ」「儲かりそうにないことを、たのしそうにやるんだな」「熱意がたっぷりあるな」そんなふうに仕事をしてみたいと思いませんか。みんなからそう見えているような、3人が集まりました。
みうら
これは、おもしろいことになりましたよ。
佐久間
はい、おもしろいことになりました。糸井さんがどうやら、地下鉄を乗り間違えたらしくて。
みうら
らしいですね(笑)。「大門駅で逆方向の電車に乗ってしまった」とさきほど糸井さんから連絡があったと聞きました。
一同
(笑)
佐久間
しかし、みなさんをお待たせするのも申しわけないので、みうらさんとぼくではじめておいてください、と。えっと、自己紹介いたします、TVプロデューサーの佐久間と申します。よろしくお願いします。
みうら
みうらと申します。よろしくお願いします。
一同
(拍手)
佐久間
みうらさんとぼくの関係を、ご存知ない方が多いと思うのですが。
みうら
ええ、そうですよね。僕も関係、忘れてましたし(笑)。
佐久間
うははは。
みうら
今日、佐久間さんにお会いするので、あらためて調べたら、「あ、そうか」と、思い出しました。
佐久間
15年前に、みうらさんとぼくは、『みうらじゅんとバナナマンのゼッタイ出る授業』という番組を、いっしょにつくりました。
みうら
佐久間さんは、番組のプロデューサーだったんですよね。
佐久間
はい。あの番組が生まれた15年前って、じつは民放系のBS放送がたちあがった時期でした。たちあがったはいいものの、なかみのコンテンツが何もないので、「何か作れ」ということになり、「なんでもいいんですか?」「ならば」と、大好きだったみうらさんといっしょに番組をつくりたいと考えました。最初の打ち合わせは、みうらさんの事務所にうかがいましたよね。
みうら
そうでしたね。
佐久間
最初の打ち合わせでは、「ゼッタイ出る授業」という内容ではなく、まったく別の番組企画を手に、みうらさんの事務所に向かいました。その打ち合わせ中、みうらさんはなぜかず~っと「ゴムへび」の話をしていたんです。
みうら
その頃、世の中でたったひとりだったと思いますが、ゴムへびがアツかったものでねぇ。
佐久間
そうなんです(笑)、もう、みうらさんはゴムへびの話をず~~っとなさってて、それがすごくおもしろかったので「これを、そのままやりましょう!」ということになりました。そのときみうらさんが「佐久間さんね、これは、出るから。テストがあったら、必ず出るとこだから」とおっしゃったんです。
みうら
たぶん言いましたね(笑)。
佐久間
その場で番組タイトルが『みうらじゅんのゼッタイ出る授業』に決まりました。「ゴムへびの話はおもしろかったんで、ぜひやりましょう!」ということになったのですが、みうらさんが「第1回目の授業から、ゴムへびはないだろう」とおっしゃって。
みうら
自分がネタを振っておきながらねぇ。
佐久間
一発目は「セガール」からいったほうがいい、というご意見で。
みうら
スティーブン・セガ―ルでいきましょう、と言いましたか(笑)。
佐久間
とうことで、初回の授業のテーマはスティーブン・セガールに決定しました。『みうらじゅんのゼッタイ出る授業』は、みうらさんの母校である武蔵美(武蔵野美術大学)で、じっさいの学生さんに教室に集まってもらって、みうらさんが授業する、という内容でした。
みうら
そうそう、うちの母校で撮らせてもらいましたね。
佐久間
そこでくり広げる、スティーブン・セガール概論。「留年生」と称して、バナナマンのふたりと松丸友紀アナウンサーが生徒席のいちばんうしろに座っている、という設定でした。学生さんたちはみんなガチでノートをとってましたね。
みうら
まず僕が基礎問題として出したのは、スティーブン・セガールの「沈黙」シリーズのタイトルがいくつ書けるか? でしたよね。
佐久間
試験にゼッタイ出る内容としてみうらさんはさっそく、皆に問いかけました。
みうら
「沈黙の艦隊」「沈黙の要塞」「沈黙のテロリスト」‥‥沈黙シリーズはたくさんありますものね。ところで僕は、スティーブン・セガールの娘さん、藤谷文子さんに、お会いしたことがあるんですよ。
佐久間
あ、藤谷さん。俳優の。
みうら
そうです。藤谷さんにお会いしたときも、当然、お父さんの話になって、「『沈黙』シリーズのタイトル、何本言えますか?」と訊きました。すると藤谷さんは「一本も言えません」とおっしゃっていました(笑)。
佐久間
そうでしたか(笑)。
みうら
でもその当時、テレ東(テレビ東京)では「沈黙」シリーズを頻繁に放送してたじゃないですか。
佐久間
はい、やってましたね。『午後のロードショー』で。
みうら
セガールと、(ジャン=クロード)ヴァン・ダム、チャック・ノリスっつったら、テレ東三羽ガラスでしたから。
佐久間
それも、あの授業でおっしゃってました。
みうら
あ、言ってましたか。
一同
(笑)
佐久間
セガールの四段活用というのも、心にずっと残ってて。
みうら
セガール、ビザール、バザール、ゴザールでしょ。
一同
(笑)
みうらじゅんさんのプロフィール
1958年、京都生まれ。イラストレーターなど。武蔵野美術大学在学中に漫画家デビュー。以後、作家、ミュージシャンなど多方面で活躍。
1997年には「マイブーム」が新語・流行語大賞のトップテンに選出。「ゆるキャラ」の名づけ親でもある。
2018年、仏教伝道文化賞沼田奨励賞受賞。
著書に『マイ仏教』、『「ない仕事」の作り方』(2021年本屋大賞「超発掘本!」に選出)、『マイ遺品セレクション』、『ハリネズミのジレンマ』『ラジオ ご歓談!(いとうせいこう氏との共著)』など。
佐久間宣行(さくま のぶゆき)さんのプロフィール
1975年、福島生まれ。TVプロデューサー。早稲田大学卒業後、テレビ東京入社。『ゴッドタン』『ピラメキーノ』『ウレロ☆シリーズ』『あちこちオードリー』『青春高校3年C組』『SICKS~みんながみんな、何かの病気~』など、数々のバラエティ番組を手がける。
2019年よりラジオ「オールナイトニッポン0」(ニッポン放送)パーソナリティ。
2021年にテレビ東京を退社、フリーに。YouTubeチャンネル「NOBROCK TV」など新たな分野に挑戦している。