「界 箱根」は、リゾート再生で知られる「星野リゾート」が、2012年末に開業した温泉旅館です。
新宿から箱根湯本まではロマンスカーで1時間25分。「界 箱根」は古くから多くの文人墨客から愛されてきた箱根の玄関口、箱根湯本の駅から車でわずか7分、旧街道から少し入った湯坂山と須雲川に囲まれたロケーションに佇んでいます。客室はすべてリバービュー。駅からそう遠くない距離にありながら、自然に抱かれたようなシチュエーションが魅力です。
「界」ブランドには、通常の客室のほかにそれぞれの宿に地域文化に携わる方々とコラボレーションし、居心地の良さと地域の個性を追求して創った「ご当地部屋」があります。
「界 箱根」では箱根の伝統工芸である寄木細工にフィーチャーしました。箱根寄木細工というのは、江戸時代末期に始まった箱根の大自然のなか育まれた木々の色や材質の違いをデザインとして使った木工工芸のこと。江戸末期以降、お土産として東海道を通り日本全国へ、また横浜の開国以降は世界へと羽ばたいていきました。
江戸時代、人々の生活の一部であった寄木細工を、現在の生活に合ったスタイルで提案する寄木細工はモダンであたたかく、不思議な愛おしさを覚えます。その真骨頂が、「界 箱根」のご当地部屋である「箱根寄木の間」なのです。
では、和室の「箱根寄木の間(特別室)」を紹介していきましょう。
居間で圧倒的な存在感を放つのが「寄木細工の机」。時の流れと共に変化してゆく寄木細工や須雲川の流れからヒントを得てデザインしたものだとか。そのほか、暮らすように滞在して欲しいという願いが込められた客室には、掛け軸、花瓶、お盆、酒器など、室内のいたるところに寄木作品が配されています。
「界 箱根」でこの部屋だけにしかないという、須雲川にせり出したせせらぎ縁台は「和心地」を満喫できる場所。
東海道の宿場町として栄え、古くから欧米人も湯を嗜みに足を運んでいた箱根は、さまざまな土地の食や文化が往来した場所。西洋料理も浸透し、独自の美食文化が育まれてきました。
季節折々の旬の食材や伝統の調理法を用いながら、現代的なアレンジを施した料理も、この宿の自慢のひとつです。厚切りの牛肉を出汁で割った味噌に砂糖を加えて鉄鍋で焼き上げた、「明治の牛鍋」はその名のとおり、明治時代の薫りが漂う牛鍋を「界 箱根」テイストを加えて、独自にアレンジしたオリジナル。温泉卵にからめながらいただけば、ほら、どこからか文明開化の香りが漂ってきませんか。(写真は取材時のメニュー)
箱根に来たからにはやっぱり温泉は欠かせません。
「界 箱根」のお風呂は、吹き抜けの半露天風呂。目の前に湯坂山の木々が迫り、まるで大きな絵画を眺めるような感覚で、箱根の名湯に身をゆだねることができます。耳には須雲川のせせらぎが心地よく、箱根の自然と一体化したかのような至福の時間を楽しみましょう。
※最新情報は公式サイトをご確認ください。
(文:Aya Hasegawa)